ANKH CROSS|BEHIND STORY VOL.2



アンクとはエジプト十字とも呼ばれる、「十字架」の形をしたシンボル。古代エジプトでは「生命」を意味する言葉とされていました。古代エジプトの壁画には、神やファラオ(王)、神格化された動物など、神秘的な古代の世界が描かれています。その中に、富や勝利の象徴として描かれている植物やモノが多く見られます。その中でも重要なものがこのアンク。「生命」の象徴です。

アンクはankhと記すのですが、有名な少年王、ツタンカーメンの名にも Tut-ankh-amen の ankh の部分にこの文字が用いられています。アンクを表すヒエログリフをかたどったものが、護符(お守り)や装飾の図柄としてよく使われているので、アンクの形状に見覚えのある方も多いでしょう。



一説によると、アンクのヒエログリフは男性原理(T字)と女性原理(卵)の結合のシンボルであり、ゆえに生命のシンボルとされるようになったのだという話もあります。またアンクは「命」そのものや、「生きること」を意味するので、長寿を象徴することもあります。つまり、永遠の命です。ですから、描かれているファラオは、このアンクを必ずといっていいほど持っているのです。

古代エジプトでは、アンクを持つことで永遠の命を願うお守り。来世で再び巡りあえるように、そして肉体が死しても魂は生き残り、命が永久に受け継がれていくようにという祈り。まさに「命」の繋がりを表したのがアンク。子孫繁栄によって自分の魂とDNAが輪廻の輪をめぐり、何千年経ったときも自分のDNAを受け継いだ子供たちが生きているようにと願ったのでしょう。



アンクの形状で印象的なのは、十字架の上に輪のようなものがついていること。輪は人と人との縁や、つながり、コミュニケーションを表します。過去世から未来へ…それもまた、永遠の命。ですから、王だけでなく、古代の神官たちも神様も、皆アンクを手にしているのです。その後、エジプトにおけるキリスト教信者【コプト】たちの中でその形が十字架に似ていたためか尊重され、キリスト教のシンボルとしても生き続けました。エジプト十字(エジプトじゅうじ)とも呼ばれ、十字架の頭に輪がついているような形は、クルクス・アンサタ、取っ手のついた十字架として、大切にされてきました。どの時代においても、宗教や文化が変化してきても、常に人気が高いシンボルがアンクなのです。